住宅を設計するとき、私たちは建物の間取りだけでなく、「どこに、何を、どのくらい収納するのか」まで考えながら設計を進めています。せっかく家を建てても、完成してから収納家具をたくさん置いてしまうと、部屋が狭くなったり、せっかくの空間が家具で分断されてしまったりすることも。そこで活躍するのが、建物と一緒につくる「造り付けの造作家具(ぞうさくかぐ)」です。

テレワーク用の書斎

一般に販売されている置き型の家具とは異なり、その家、その場所、その用途に合わせてつくる家具を「造作家具」と呼びます。壁から壁までぴったり納めたり、天井いっぱいまで収納にしたり、階段や窓まわりなど通常なら使いにくい場所を収納に変えたり。寸法や素材、収納するものまで考えてつくるため、空間を無駄なく使えることが大きなメリットです。特にシンプルな棚などは、建築工事の際に大工さんにつくってもらうことで、比較的コストを抑えながら、その場所にぴったりの収納をつくることもできます。
私たちは設計の段階から、「ここには本を何冊くらい置きたい」「掃除機はここにしまいたい」「子どもの作品を飾りたい」「仕事用のデスクもつくりたい」など、住まい手の暮らしを伺いながら、適材適所の収納や家具を建築の一部として計画しています。そんな造作家具の実例を、いくつかご紹介します。

オープン棚・本棚の事例
壁一面を使ったオープン棚は、造作家具の定番です。市販の本棚をいくつも並べるのではなく、壁の幅や天井の高さに合わせて設計することで、空間を無駄なく使うことができます。本だけでなく、家族の写真や旅行の思い出、子どもたちの作品、お気に入りの小物などを飾れば、収納そのものが家族のギャラリーになります。棚板を可動式にしておけば、文庫本から大きなアルバムまで、収納するものに合わせて高さを変更することも可能。必要に応じてコンセントや照明器具を棚の中に組み込めるのも、建築と同時に設計する造作家具ならではです

階段は、単に上下階を移動するだけの場所ではありません。例えば大学の先生のお住まいでは、たくさんの本を収納できるよう、階段まわりを大きな本棚として計画しました。また別の住宅では、「どこかへ上がるため」ではなく、本を収納し、読むための階段書庫そのものをつくった事例もあります。階段に腰掛けて本を読んだり、途中でお気に入りの本を手に取ったり。「通路」と「収納」、さらに「居場所」を重ね合わせることで、限られた住宅の面積をより豊かに使うことができます。






階段回りに本棚設置 大学の先生の家



2階からどこに上がるわけでもないけれど、階段書庫

ニッチという壁の厚さを利用して窪みの収納をつくる方法も多用

外断熱仕様のためニッチが作りやすく随所にニッチ


階段途中のちょっとしたところのニッチ
丸いニッチ飾り棚


暖炉もニッチの中へ
ニッチは収納だけではありません。リビングでは、バイオエタノール暖炉を壁の中へ組み込み、炎を楽しむための場所として計画した事例もあります。設備機器を単独で置くのではなく、壁や収納と一体にデザインすることで、機能を持たせながらインテリアとしても美しく納めることができます。



部屋を仕切るために、必ずしも壁をつくる必要はありません。例えばダイニングと階段の間に収納家具を設ければ、「収納」と「間仕切り」の二役を持たせることができます。一部にガラスを組み込めば、視線を適度に遮りながら光を通すことも可能です。ただの壁なら「仕切る」だけですが、そこに収納や飾り棚の機能を加えることで、同じ面積でもできることが増えていきます。限られた住宅の中では、こうした「ひとつの場所に複数の役割を持たせる」ことも大切な設計手法です。


造作家具というと、大きな本棚や収納をイメージするかもしれませんが、もっとシンプルなものもあります。例えば、窓辺に一枚の板を設ければ、それだけでちょっと腰掛けられる造作ベンチになります。外を眺めながら本を読んだり、子どもが遊んだり、家族が並んで座ったり。

出窓と組み合わせれば、窓辺そのものをソファのような「居場所」にすることもできます。収納が必要ならベンチの下を引出しにするなど、使い方に合わせて機能を加えていくことも可能です。家具を置くのではなく、建築そのものに「座る場所」をつくる。そんな考え方も、造作家具の楽しさのひとつです。


造作家具の目的は、単に収納量を増やすことではありません。何をどこで使い、どこへ戻すのか。家族がどこに集まり、どこで本を読み、何を飾るのか。掃除や片付けをどうすれば少し楽にできるのか。そうした日々の暮らし方を考えた結果として、必要な場所に必要な家具をつくることが大切だと考えています。
10軒の家があれば、家族構成も持ち物も生活スタイルも違い、必要な収納も10通り。だからこそ私たちは、間取りを考えるのと同じように、収納や家具についても設計の初期段階から一緒に考えます。本棚、デスク、ベンチ、ニッチ、間仕切り収納――。建築と家具を一体的に考えることで、限られた空間を有効に使いながら、すっきり暮らせて、ちょっと楽しい住まいをつくることができます。「ここにこんな収納があったら便利」「この場所でこんなことをしてみたい」そんな小さなご要望も、ぜひ家づくりの最初からお聞かせください。それを建築の一部として形にできることが、造作家具の大きな魅力だと思っています。
建築に関するご相談は無料で承ります。お気軽にご相談下さい。
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