【ドイツ・オーストリア建築研修2010】その⑤ソーラーシティ、プラスエネルギー・ハウス2010/04/10

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ディッシュ氏のソーラーシティ、プラスエネルギー・ハウスの様子

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ソーラーシティは設計者であるロルフ・ディッシュ自らが施主となり、デベロッパー会社を設立、建設した大変特異なプロジェクトと言える。ディッシュ氏の掲げた“プラスエネルギー・ハウス”の建設には、当時の行政や銀行が懐疑的であったため、一般の投資家(四角いリッター・チョコレートのリッター氏など)やファンドを投資して当初の計画の40%の敷地面積でプロジェクトが実現した。ソーラーシティは真南に向かったテラスハウスタイプの木造住宅と、道路沿いに東西に125メートルのびるRC造のオフィス、店舗棟からなり、全ての建物の外皮性能はパッシブハウス性能で設計されている。住宅数はおよそ100世帯、70から200平米までの住宅タイプが混在している。

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屋根に乗せられた太陽光発電のパネルは合計1000平米(一世帯当たり3~10kWp、年間発電量2800~9600kWh、発電効率13%)住宅の外壁の断熱性能は平均で0.12W/m2K、住宅は平均で一次エネルギー消費量-36kWh/m2aを達成。エネルギーを消費する代わりに、エネルギーを作り出している状態となる。ソーラーシティの給湯と暖房需要を賄う地域暖房システムのボイラーは、ロシアから買い取ったガスによって運転されているが、計画当初はバイオマス・ボイラーを想定しており、それが実現した場合は一次エネルギー消費量が-200kWh/m2aに達していたとされる。

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住宅建設には、入居者や投資家が集まった分だけを建設してゆく段階的な手法がとられたが、そのプロセスの途中の2001年に、ドイツでは太陽光発電で発電された電力の買い取りルールが改正され、より良い単価で20年間電力を売却できるようになった。それを受けてソーラーシティにおいても、2001年以降に竣工した住宅棟では、太陽光発電パネルの取り付けられた庇の長さが1メートル以上長くなっていた! ソーラーシティでは、住宅の断熱性能を現状の省エネ法令EneV2002基準からパッシブハウス基準に引き上げるために1棟当たりおよそ18,000ユーロのコストアップが生じている。これによって年間の光熱費は3000ユーロから150ユーロに減少、更に18,000ユーロのコストアップで太陽光発電パネルを屋根に搭載することで、毎月の光熱費はマイナスに転じ、入居者は毎月収入を得ることが可能となった。

仕様模型
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ゼロエネルギーどころかプラスエネルギー住宅を実現している点に感心するが、効率を考え建物の形状が全部同じ・・という部分が気になる。この建物群は実験棟という意味合いもあるのかもしれないが・・環境を突き詰めるとひとつの形になるではさびしい印象がある

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太陽光発電パネルが屋根材、当初は地下室も計画していたが予算の関係で庭の物置に変更されたようです

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ドイツ・フライブルグ、ボーヴァン地区にて

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